東京地方裁判所 昭和44年(借チ)27号・昭44年(借チ)2041号 決定
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〔主文〕 1 申立人が、相手方中里に対し金一六〇万円、相手方須藤に対し金一〇六万円を支払うことを条件に、申立人が、東京都中央区銀座西七丁目六番地金井企業株式会社に対し、別紙目録(2)記載の土地転借権を譲渡することを許可する。
2 申立人が、金井企業株式会社に前項の土地転借権を譲渡することを条件に、(一)別紙目録(1)記載の土地賃貸借契約(原賃貸借契約)を別紙目録(2)記載の土地102.34平方米(30坪9合6勺)を借地とするものとその余の土地を借地とするものとの二箇の賃貸借契約に分け、右二箇の賃貸借契約のうち右102.34平方米(30坪9合6勺)の土地についての賃貸借契約及び別紙目録(2)記載の転貸借契約の目的を堅固建物の所有に変更する。
3 前項により原賃貸借契約及び転貸借契約の目的が堅固建物の所有に変更された場合、前項の土地102.34平方米(30坪9合6勺)についての原賃貸借契約及び転貸借契約の期間を右目的変更の日から三〇年に変更する。
〔決定理由〕(申立の要旨)
1 須藤半次郎は、中里磯次から、昭和三年一月一日その所有にかかる別紙目録記載の宅地102.34平方米30坪9合6勺(以下本件土地という。)を含む宅地三五〇坪(その後区画整理により二八二坪に減歩)を非堅固建物所有の目的、期間二〇年の約で賃借し、右賃貸借契約は更新を重ねて現在にいたつている。右契約当事者はいずれも死亡し、相手方中里が相続により賃貸人の地位を承継し、相手方須藤が相続により賃借人の地位を承継している。
2 申立人は、本件土地の転借人森房子から、昭和三一年一〇月本件土地上にある家屋番号三〇四番二木造瓦葺二階建旅館一棟床面積一階二一坪九合七勺二階一八坪一合九勺(以下本件建物という。)を買い受けるとともに、相手方両名の承諾を得て本件土地転借権の譲渡を受けた。
右転貸借契約の現在の内容は、別紙目録(2)記載のとおりである。
3 申立人が森房子から本件建物を買い受けた当時、本件土地附近は堅固な建物は存在しなかつたが、本件土地は国鉄渋谷駅に近く、既に準防火地域の指定を受け、最近はビルが建ち始め、現に借地権を設定するにおいては堅固の建物の所有を目的とすることを相当とするにいたつている。
4 申立人は、本件建物を毀しそのあとに鉄筋コンクリート造の貸ビル建築の計画を有する主文掲記の金井企業株式会社に本件建物及び本件土地転借権を譲渡したいが、相手方らの承諾が得られないので、土地転借権の譲渡許可と原賃貸借契約及び転貸借契約の契約の目的を堅固建物所有に変更する裁判を求める。
(決定理由)
1 本件の資料によれば、申立の要旨として掲げた1、2の事実のほか、本件土地は国鉄渋谷駅の南方約二〇〇米の地点にあり、附近の地域は、区画整理による街区の整備がなされ、いまだ一般住宅も散在するが、都市計画上商業地域、準防火地域、第五種容積地区に指定され、地価の高騰と相待ち、土地の高度利用の傾向が一般的に見られ、老朽建物の建替の場合には殆ど高層化、堅固化が意図され、商業地区としての急激な質的変化が見られること及び金井企業株式会社が本件転借権を譲り受けても相手方らの不利になるおそれがないことが認められるので、本申立は、これを認容すべきである。
2 次に附随の処分について考える。
借地権譲渡の場合、巷間においては、借地権譲受人に対し二〇年の借地期間を保障した上、借地人賃貸人間において借地権価格に対する一〇%ないし一五%の名義書替料の授受がなされる事例が多い。本件は、借地権譲渡許可の申立と建物の構造に関する借地条件変更の申立が併合されているのであるが、その実質は、申立人の金井企業株式会社に対する借地権譲渡許可の申立と、右許可の裁判後に同会社がなす建物の構造に関する借地条件変更の申立であると見られるので、借地権譲渡許可の裁判に伴う財産上の給付は、条件変更後の借地権価格を基準にせず、条件変更前の借地権価格を基準に考慮すべきである。名義書替料は、本件の場合、条件変更の申立が併合されているので、この点を考慮し、前記巷間の取引事例を参考にして、借地権価格の一〇%を相当とし、残存期間が七年あるので、財産上の給付額は、借地権価格の一〇%に二〇分の一三を乗じたものを相当とする。鑑定委員会の意見によると、本件土地の更地価格は一平方米二二万五、〇〇〇円、借地権割合七五%であるので、財産上の給付額は、一一二万円(一万円未満四捨五入)となる。
次に条件変更に伴う財産上の給付額は、条件変更に伴う借地権価格の増加分を基礎に考慮するのが相当であり、鑑定委員会の意見によれば、右価格は、更地価格の一割上昇するとのことであるので、本件借地権価格は、条件変更の裁判により、二三〇万二、六五〇円増加することになる。ところで、昭和四〇年三月三一日大蔵省令第一五号減価償却資産の耐用年数等に関する省令によると、本件転借権の譲受人金井企業株式会社が建築を予定している鉄筋コンクリート造のビルの耐用年数はおよそ六〇年と認められ、右六〇年の内当初の二〇年分については先に財産上の給付につき考慮が払われているのであるから、条件変更に伴う財産上の給付額は、右借地権価格の増加分二三〇万二、六五〇円の六〇分の四〇に当る一五四万円(一万円未満四捨五入)を相当とする。
本申立認容の裁判に伴う財産上の給付は右のとおり合計二六六万円であるが、本件の資料によれば、申立人が前転借人森房子から本件転借権の譲渡を受けた際、森房子・相手方須藤間に額は不明であるが名義書替料の授受がなされたのに拘らず、相手方中里はなんらの金銭を受取つていないことが認められるので、前記財産上の給付額合計二六六万円を相手方中里に対し三、相手方須藤に対し二の割合で按分するのが相当であり、財産上の給付として、申立人に対し、相手方中里に対し、金一六〇万円(一万円未満四捨五入)、相手方須藤に対し、金一〇六万円(一万円未満四捨五入)の支払を命ずることとする。
なお、本件転借地は、原賃貸借契約の借地の一部であるので、財産上の給付、借地期間の関係から、原賃貸借契約を本件転借地とその余の土地の二箇の契約に分割するのが相当であり、また、本件申立認容の裁判に伴い、原賃貸借契約(本件転借地に関するもの)及び転貸借契約の期間を主文のとおり変更するのを相当と認める。
その他の附随処分は、これをなす必要を認めない。 (小山俊彦)
目録(1)
(土地賃貸借契約の内容)
一、当事者
賃貸人 相手方 中里武一
賃借人 相手方 須藤佑之
二、借地
東京都渋谷区桜ヶ丘三二番一
宅地 2,916.99平方米(882坪3合9勺)のうち、932.23平方米(282坪)
三、目的
非堅固建物所有
四、期間
昭和六二年一二月三一日まで
目録(2)
(土地転貸借契約の内容)
一、当事者
転貸人 相手方 須藤佑之
転借人 申立人
二、借地
東京都渋谷区桜ヶ丘町三二番一
宅地 2,916.99平方米(882坪3合9勺)のうち102.34平方米(30坪9合6勺)
三、目的
非堅固建物所有
四、期間
昭和五一年一〇月三一日まで
五、貸料
昭和四三年五月一日以降一ヶ月五、〇五〇円